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2013年02月08日

お時間ある方~暇な方~


「少年野球始めてみたら」

と親の問いかけにけだるそうに答えた

「いや」

「何で」

と理由を聞く親に対し

「だって…ボール硬いし当たると痛いもん」

なんとも気の無い返事である

「じゃあ何ならやるの」

親の最終攻撃に当時まだ下呂にクラブが存在しなかった

「サッカー」

と答えて勝利を確信した

これでスポーツはやらずに済む…

そう思った二ヵ月後サッカークラブは創立された

作ったのはそう……もちろん親である

今日はそんなお話

中学に入るに向けなんとしてでもスポーツをやらせたかった親は


スポーツがやりたくない僕がクラブが存在しないただそれだけの理由で答えた

「サッカー」と言う言葉を真に受けサッカークラブを作った

「やばいことになった…」

もう引くに引けない状態に追い込まれた

腹をくくり初めての練習へと足を運んだ

その足取りは重かった…

まだ創立したばかりとあって人数はまばらである

そんな中記念すべき初めての練習が始まった…

最初の方は筋力トレーニングやボールの蹴り方など基礎を習った

それなりに楽しかったのを覚えている

しかし日がたつにつれ練習内容も激しいものになる

ボールの奪い合いが最も苦手な僕は常に相手選手に

「そんなに欲しいならボールあげるから…そんな怖い顔で迫ってこないでくれ」と心の中で思っていたものである

そんな弱気な僕を見かねて監督は言った

「背も高いしキーパーやれ」

開いた口がふさがらなかった

最も責任が掛かる場所である

「そんなの無理です」

僕は必死に抵抗した

すると監督は

「シジマールに似とるから大丈夫や」

知らない人も多いかも知れないがシジマールとは当時Jリーグで最も素晴らしかったキーパーの名前である

お時間ある方~暇な方~

プレーが似ているわけじゃなく背格好が似ているだけで付けられたとも知らず

何の根拠も無い監督からの発言を鵜呑みにし

出来るような気になってしまうのだから子供というのは不思議な生き物である


「俺はシジマールや」

その日を境にシジマールになるべく辛く過酷な道のりが始まった

キャッチの仕方ゴールキックの飛ばし方などやることは山ほどある

最初こそ苦戦したが慣れてくると楽しくなってくる

監督にも

「凄くいいぞ」と言われ

チームメイトからも

「良く飛ばせるな~」

「ナイスキャッチ」

など声を掛けられ


「俺は未来のシジマールなんだ」

と心の中でほくそ笑んでいた

そんな順風満帆なサッカー生活の中公式試合の参加が決まった

練習の甲斐なのか親がサッカー創設者と言う事なのか真相は定かではないがスタメンに選ばれた


「よしやってやる」

強気な感情が生まれたのを僕は感じていた


組み合わせ抽選により対戦相手が決まった

「F川FC」

県大会を優勝してしまう県内最強チームである


そんな最強チームとの対戦が決まっても僕の気持ちは動じなかった


どうしてかって

「何故なら僕はシジマールなのだから…」


当日になってもその気持ちは揺らがなかった

試合前F川FCの応援が聞こえてきた

そのふざけた応援に耳を疑った

「これから始まる萩原合戦何点入るか分らない~♪1点2点3点4点5点6点7点8点9点10点おまけに11点」

アルプス一万尺のメロディーに乗せ替え歌風に…


しかもおまけまでつけてやがる


皆の顔色が変わった

円陣を組みキャプテンが言った

「あんなふざけた応援されて黙ってられるか絶対勝つぞ」

「おぉーーー」

その掛け声に自チームの応援団から拍手が巻き起こった

そんな皆の熱を体で感じ僕の心も燃え上がった

「ピー」

試合が始まった

初の公式戦とあり皆の動きが硬い

開始3分で先取点を決められた…

その1分後にもう一点

キャプテンが初の公式戦でガチガチな皆を集めていった

「緊張せずにやろうそうすればうまくいく」

その言葉を受けた皆の動きが変わった

緊張は無くなり本来の動きが出来るようになってきた

「よしいける時間は充分ある逆転だ」

とおもった矢先にゴールを決められた…

そこから1点また1点と…点数が積み重なる

前半終了のホイッスルの笛がなりスコアーボードを見ると

8対0

シジマールになれると一瞬でも思った自分を恥じた


自分のキーパーという存在価値が分からなくなると同時に

ふと忌々しい応援がよみがえってきた

あと三点であの応援が現実になる

必死で頭の中にある邪念を振り払いベンチに戻る

早速監督からの指示が飛ぶ

だが皆に聞く精神力が残っていない

後半戦を告げるホイッスルがなった

重い足取りでピッチに向う

そんな中キャプテンが皆を集めて声を掛ける

「あと3点…」

この言葉が全てを物語っていた

皆も僕が抱いた同じ邪念をいだいていたのだと…

だが不思議とその言葉で吹っ切れたのか皆の顔色が変わりボールも廻るようになってきた


そうおもえた筈だった…

「ピーピー」


試合終了

15対0でF川FCの勝ち

言葉を失うスコアーがそこには並んでいた

バレーでもない

野球でもない

最も点数が入りにくいといわているサッカーでの歴史的敗退


言葉が出なかった…

替え歌の11点が可愛く思えてきた瞬間だった


こうして中学では当時15点マッチのバレーに入ったのである

もうこれ以上点数が入らぬようにと願いを込めて…


もちろんこの話はノンフィクションである


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Posted by 飛騨川温泉しみずの湯 at 11:39│Comments(5)
この記事へのコメント
とても 面白かったです(^o^)/
昼休みが有意義な時間になりました。 
才能あるんじゃない?
次回作はいつかな~(*^^*)
楽しみにしていますよ\(^o^)/
Posted by さくら at 2013年02月08日 13:23
笑えました(^o^)(^o^)(^o^)
Posted by ミスターx at 2013年02月14日 22:20
さくらさんコメントありがとうございます

次回作は東野圭吾さんの作品にぶつけようと思いますW


これからも有意義な時間を提供できるように頑張りますね(^_-)-☆
Posted by ノッポ at 2013年02月16日 17:54
ミスターxさんコメントありがとうございます

一番嬉しい言葉です

今後もごひいきにw
Posted by ノッポ at 2013年02月16日 17:56
おじさんから聞いて見てみましたー(*´∇`*)
そんな裏があったとは…シリーズ化してもらいたいくらい面白かったですよー(*≧∀≦*)
Posted by 近所のノッポ子 at 2013年02月23日 19:55
 
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